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御祭神は、母神 八上姫様です。
「うばすて山と木俣年(このまたどし)」
還暦(生まれて61年目)の年を、昔から木俣年といっているところが各地にあります。この年齢になると、うばすて(姥捨)といって、昔は老人を山へすてた、ということを多くの人は信じているようですが、そうではないのです。その昔は、生活にゆとりのある人は木俣年になると静かな山の中へ入って隠居して暮らしたものです。さらにそこには、産屋(うぶや)もあって、お産や赤子の世話を老人がしたものです。
この里は、よい水、広い田畑があり、内海(入海)に近くて魚もとれ、交通の便もよく、住みよい地であったので、生活にゆとりのある古代人が多かったように思われます。
八上姫が産気づかれたとき、その産屋にみちびかれ、木俣年の老女たちが手伝ってお子神をご安産になったのではないかと考えられます。そのようなことから、そのお子神は木俣神(このまたのかみ)といわれるようになった、といえそうです。古事記では、生まれたばかりのお子神を、木の俣にかけておいたまま母神が因幡へお帰りになった、とありますがいかに神代の昔話であるとはいえ、ひどすぎるように思われます。
この地のうばすて山のすぐ西方の丘のふもとに、結(むすび)神社があります。雲陽誌(1717年)には、実巽(じっそん)神社とあり、八上姫神をご祭神としている、とあります。
いい伝えによると、この地の神々が因幡国へお帰りになろうとしている八上姫を引き留められて、この丘のりっぱなお宮をつくってさしあげたので、思いとどまられた八上姫はここにお住みになり、お子の木俣神の成長をねがわれ、そして、お子神と共にこの結の里の守護神となられた、ということです。
「斐川の地名散歩」より抜粋 著者:池田敏雄(郷土史家)